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鹿児島地方裁判所 昭和63年(ワ)543号 判決 1992年8月28日

鹿児島市荒田一丁目七番一六号

昭和六三年(ワ)第五四三号事件原告、

平成元年(ワ)第三四一号事件被告

(以下「原告」という。)

株式会社ほっかほっか亭

右代表者代表取締役

木佐貫晶裕

鹿児島市荒田一丁目七番一六号

平成元年(ワ)第三四一号事件被告

(以下「三四一号事件被告」という。)

株式会社鹿児島食品サービス

右代表者代表取締役

木佐貫晶裕

右二名訴訟代理人弁護士

谷合克行

池田〓

寺田昭博

鹿児島県大口市里二一一一番地

昭和六三年(ワ)第五四三号事件原告補助参加人

(以下「補助参加人」という。)

有限会社かきもとフーズ

右代表者代表取締役

柿元正和

鹿児島県姶良郡姶良町西餅田三四四四番地七六

補助参加人

町田秀明

鹿児島市天保山町七番一一号

補助参加人

有限会社トリオフーズ

右代表者取締役

瀬戸山正一

鹿児島市谷山港二丁目一番四

補助参加人

株式会社マルモ

右代表者代表取締役

大茂健二郎

鹿児島県出水市昭和町五七番四〇号

補助参加人

出水石油株式会社

右代表者代表取締役

松山勇

鹿児島県薩摩郡入来町浦之名一八六番地

補助参加人

株式会社エイティー今藤

右代表者代表取締役

今藤尚一

鹿児島県加世田市本町八番地五

補助参加人

有限会社清水商事

右代表者代表取締役

清水義夫

鹿児島市城南町三番三号

補助参加人

株式会社城南フード

右代表者代表取締役

松山保

鹿児島市天保山町七番一一号

補助参加人

有限会社フーズサプライスズヤ

右代表者代表取締役

木佐貫京子

鹿児島市紫原四丁目一九番二一号

補助参加人

田仲耕一郎

鹿児島県国分市中央一丁目五番一三号

補助参加人

楠元允

宮崎県都城市大王町四五番六号二

補助参加人

岡崎誠

鹿児島市照国町八番五号

補助参加人

海江田豊秋

鹿児島県川辺郡知覧町塩屋二八九〇六番地

補助参加人

内村司

鹿児島県姶良郡加治木町反土三一七二番地四

補助参加人

佐藤和昭

鹿児島県曽於郡松山町新橋六八二三番地

補助参加人

大迫慧

鹿児島市上荒田町三番二三号Gビル

補助参加人

森清憲

鹿児島市甲突町二二番五号

補助参加人

畠里タミ

鹿児島県出水市上鯖渕四八番地三

補助参加人

駒走一郎

鹿児島県日置郡伊集院町徳重四七四番地

補助参加人

山内ミツ子

鹿児島市西陵二丁目一九番一二号

補助参加人

宝代重雄

右二一名訴訟代理人弁護士

染川周郎

長崎県佐世保市卸本町一番二号

昭和六三年(ワ)第五四三号事件被告、

平成元年(ワ)第三四一号事件原告

(以下「被告」という。)

株式会社プレナス

右代表者代表取締役

塩井末幸

右訴訟代理人弁護士

松崎隆

永山一秀

斉藤芳朗

主文

一  昭和六三年(ワ)第五四三号事件原告の請求をいずれも棄却する。

二  平成元年(ワ)第三四一号事件被告らは、別紙標章目録(一)、(二)記載の標章を、弁当、サラダ、味噌汁、スープの包装に使用し、また右標章を包紙に使用した弁当、サラダ、味噌汁、スープを販売してはならない。

三  同事件被告らは、その本店及び直営店において、「ほっかほっか亭」と表示して、弁当、サラダ、味噌汁、スープの製造、販売をしてはならない。

四  同事件被告らは、「ほっかほっか亭」と表示して、加盟店を募集してはならない。

五  同事件被告らは、その本店及び直営店における看板、テント、メニュー表示板、帽子及びエプロンにおける別紙標章目録(一)、(二)記載の標章の表示を抹消し、かつ、右標章の表示がされた包装紙、箸袋、弁当箱、サラダ容器、味噌汁容器、ビニール袋、シール及びポスターを廃棄せよ。

六  同事件被告らは、同事件原告に対し、「クッキングマニュアル《応用実例写真集》」と題する冊子及び「ほっかほっか亭会員証」を引き渡せ。

七  同事件被告株式会社ほっかほっか亭は、鹿児島地方法務局昭和五七年七月六日付でなされた商号変更登記中「ほっかほっか亭」の部分の抹消登記手続をせよ。

八  訴訟費用のうち参加によって生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余は株式会社ほっかほっか亭(昭和六三年(ワ)第五四三号事件原告、平成元年(ワ)第三四一号事件被告)及び株式会社鹿児島食品サービス(平成元年(ワ)第三四一号事件被告)の連帯負担とする。

事実

第一  請求

(昭和六三年(ワ)第五四三号事件)

一  原告と被告との間において、原告が三四一号事件被告(当時、鹿児島食品サービス株式会社)と被告間の昭和六一年五月一日付フランチャイズ契約に基づき、右フランチャイズ契約上の鹿児島地区本部たる地位にあることを確認する。

二  被告は、別紙加盟店目録記載の加盟店に対し、電話又は面接の方法により、左のことを述べてはならない。

1  「地域本部との新規契約に応じない限り、商標、看板などをはずさなければならない。」

2  「食材、包材をストップする。」

3  「地域本部との契約に応じない場合は、隣接して新規弁当販売店を開いてつぶす。」

4  「ほっかほっか亭鹿児島地区本部の弁護士は辞任した。」

三  被告は、右目録記載の加盟店に立ち入って、原告、加盟店間の契約の解除及び右にかわる被告、加盟店間の新規ほっかほっか亭フランチャイズシステムチェーン契約の締結を強要してはならない。

(平成元年(ワ)第三四一号事件)

主文二ないし七項と同旨。

第二  主張

(昭和六三年(ワ)第五四三号事件)

一  請求原因

1  被告の地位

(一) 株式会社ほっかほっか亭九州地域本部は、昭和五五年五月一〇日、訴外株式会社ほっかほっか亭総本部との間で、「地域本部契約」を締結し、九州において、(1)「ほっかほっか亭」のマーク、ノウハウを用いて弁当などの商品を製造、販売する店舗(以下「直営店」という。)を出店する権利、(2)右同様のシステムで弁当などの商品の製造、販売を営む業者(以下「加盟店」という。)を募集する権利、(3)地区本部契約者(以下「地区本部」という。)を募集して同人に、九州内の特定地区内で(1)(2)の出店などを行わせる権利、(4)加盟店より、加盟店契約時に八〇万円((3)の地区本部が募集した店舗については三〇万円)、毎月ロイヤリティーとして七万円((3)の地区本部が募集した店舗については、一万八〇〇〇円)の各支払を受ける権利を取得した。

(二) 株式会社ほっかほっか亭九州地域本部は、昭和五八年五月一〇日、ほっかほっか亭総本部から、山口県における(一)項記載と同様の権利を取得した。

(三) 被告は、昭和六二年六月三日、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部を吸収合併した。

2  三四一号事件被告(旧商号南日本事務機株式会社、昭和五六年五月三〇日鹿児島食品サービス株式会社に商号変更、更に平成三年一月四日株式会社鹿児島食品サービスに商号変更)は、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部との間で、昭和五五年一一月二一日、左記のとおりの「ほっかほっか亭地区本部契約」を締結した。

(一) 基本的確認事項

地域本部は各加盟店の協力を得て標準的、統一的、個性的な「ほっかほっか亭システム」を開発、創造するために、多くの時間、労力、資金を投入し、「ほっかほっか亭システム」は各種のマニュアルと統一書式とに集約され、かつ店舗の開発、運営技術及びそのための教育、技術指導、更に、原材料メニューの開発技術とによって構成されていることにより、消費者のニーズに対応することで提供するメニューの品質、価格共に、多くの消費者からの指示と信用を得、この結果、地域本部の所有するトレードマーク、サービスマーク、シンボル、トレードネームによって同業他店と識別されている。地区本部は、地域本部が全国的権利を有し各種マニュアル、統一書式、各種資料、前記のマーク、シンボル、ネームに関する著作権の所有者であること、これに消費者および取引先の支払と信用が付加されていることを確認することを条件に、地域本部は地区本部に対して、テリトリーを設定し、前記マニュアル、統一書式、各種資料、マーク、シンボル、ネームおよび店舗の開発、運営技術、そのための教育、指導技術を提供する。

(二) 地区本部の権利

地域本部は、地区本部に対し、地区本部の名称を「ほっかほっか亭鹿児島地区本部」とし、鹿児島県内一帯をそのテリトリーとして認め、地区本部は、そのテリトリー内において、直営店を出店する権利、及び加盟店を募集する権利を取得し、地区本部は、前述の各種マニュアル、統一書式、各種資料、トレードマーク、サービスマーク、シンボル、トレードネームに関する著作権を、本契約で定められた方法、範囲内で使用することができる。

(三) 地域本部の権利

地区本部は地域本部に対し、(1)ライセンス料として金三〇〇万円、(2)ノウハウ使用料として、テリトリー内で開店する加盟店一店舗につき、開店時に金三〇万円(ただし、支店の場合は一五万円)、(3)ロイヤリティーとして、テリトリー内で開店する直営店、加盟店一店舗につき月額一万八〇〇〇円を現金で支払う。

(四) 地域本部の地区本部に対するサービス

地域本部は地区本部に対し、(1)地区本部の代表に、<1>立地調査、選定、物件取得の方法、<2>販売予測、資金計画、<3>店舗設計および設備計画、<4>店作業研修、<5>社員、パート、アルバイト等の採用、訓練、運用の方法、<6>原材料、消耗品の発注、仕入、支払の方法、<7>計数管理および会計のシステム、<8>販売促進企画、<9>各種申請手続、<10>右<1>ないし<9>の指導、研修システムの確立、などのほっかほっか亭システムを習熟させ、(2)ほっかほっか亭システムが、時代を先取りし、多様に変化する消費者ニーズに応え続けるために、常に調査・分析を行い、これに基づき、<1>新商品の導入、<2>商品の提供方法についての変更の改善、<3>仕入先の変更、<4>右(1)<1>ないし<10>についての変更・改善・追加、<5>その他ほっかほっか亭システムに関する変更・改善につき指導、指示する。

(五) 地区本部の義務

地区本部は、地域本部に対し、次の義務を負う。

(1) 地域本部が地区本部に指導、指示する右(四)(2)<1>ないし<5>記載の事項を履行し、テリトリー内の加盟店に積極的に導入させなければならない。

(2) 本契約の実施、遂行に際し、これに相反するいかなる性質の契約、協定、覚書規制に、現在、将来とも関係しない。

(3) 地区本部が右(四)(2)<1>ないし<5>項記載の事項の変更、改善、追加を独自で行う場合は、地域本部の承認と許可を得なければならない。

(4) ほっかほっか亭のトレードマーク、サービスマーク、シンボル、トレードネーム及び各種マニュアルを進んで保護し、類似物および類似表示を発見した場合は、速かに地域本部に連絡する。

(5) 地区本部の加盟店、直営店に対し地域本部の許可なく、トレードマーク、サービスマーク、シンボル、トレードネーム、各種マニュアル、各種販売、事務資材を他に譲渡したり、印刷したり、添付・関連して使用させたりしない。

(6) ほっかほっか亭ショップは、地域本部が開発した各種マニュアルに基づきマニュアルに示された事柄を忠実に励行することによって、清潔感にあふれた調理場、売場を維持し、統一性のある均質の商品とサービスを提供させるものでなければならない。

(六) 契約期間、更新

(1) 契約書の有効期間は、本契約の効力発生の日から向う五か年とする。

(2) 契約書の更新については、契約期間満了の一八〇日前に本契約当事者双方から特別の申出のない限り、自動的に更新するものとする。

(七) 解除権

地域本部は、次の場合に催告なくして本契約を解除することができる。

(1) 地区本部がライセンス料、ノウハウ使用料、ロイヤリティー、その他の代金の支払を怠り、請求後三〇日を越えても支払がない場合

(2) 本契約および本契約に関連して締結した契約、協定、覚書の各条項に違反した場合

(3) 地区本部が、会社更正、会社整理、仮差押、仮処分、差押、競売の申立、破産等の申立があったとき、又は解散したとき

(4) その他本契約に違反したとき

(八) 契約終結にあたっての原状回復

(1) 本契約の終結に伴い、地区本部は、地区本部とほっかほっか亭システムを何らかの形で関係づける全てのトレードマーク、サービスマーク、シンボル、トレードネームの使用を停止し、本契約終結と同時に地区本部の費用において取り片づける。

(2) 地区本部は、ほっかほっか亭システムに関連する一切の資料を商業機密であると認め、本契約の終結にあたり、地区本部の所有又は管理下にある各種マニュアル、会報、通達、その他の販売・事務資料等のほっかほっか亭システムに関連する一切の資料を、地域本部に返却する。

(九) 損害賠償など

(1) 地区本部が本契約に違反したことにより、地域本部に損害を与えた場合は、地区本部は、地域本部に対してそのエリアの中で展開している直営店および各加盟店の店舗数に、ロイヤリティーの六〇か月分を掛けて算出した金額を支払う。

(2) 地区本部の加盟店に対する権利は、地域本部において自動的に継承するものとし、これを処理する。

3  三四一号事件被告代表取締役木佐貫晶裕は、昭和五七年七月六日、「株式会社フジ通商」(代表取締役木佐貫晶裕)の商号を「株式会社ほっかほっか亭」と変更したうえで、2項記載の地区本部契約に基づく地位を、「株式会社ほっかほっか亭」(原告)に譲渡した。株式会社ほっかほっか亭九州地域本部は右事情を了解しあるいは黙認した。

4  原告は、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部との間で、昭和六一年五月一日、2項記載の地区本部契約を、契約期間を契約の効力発生後向う三年間とすること、地区本部が地域本部に支払うノウハウ使用料についての支店についての但書(請求原因事実2(三)(2))を除き、同一の条件で更新した(以下、特に区別しない限り更新前の契約及び更新後の契約を一括して「本件地区本部契約」という。)。

5  被告は、昭和六三年七月六日付内容証明郵便により本件地区本部契約を解除した、あるいは昭和六三年八月二五日付内容証明郵便により本件地区本部契約の更新を拒絶する意思表示をしたことにより本件地区本部契約期間終了日である平成元年四月三〇日の経過により、本件地区本部契約は終了したとして原告の本件地区本部契約上の地位を争っている。

6  被告は、本件地区本部契約が終了する予定であること、あるいは終了したことを前提に、昭和六三年七月四日以降、原告のテリトリー内の加盟店に対し「食材、包材をストップする。」「地域本部の契約に応じない場合は、隣接して新規弁当販売店を開いて、つぶす。」「本日よりトーホー、ミサカは仮契約書に印鑑を押さない限り食材、包材は配送しません。」「仮契約書に判を押さないと、品をストップします。看板をおろすのは裁判で三年ほどかかるかもしれませんが、隣に店舗をつくってしまいますよ。」「ほっかほっか亭鹿児島地区本部の弁護士は辞任した。」「支部を作って営業活動を行う。」などと申入れ、加盟店に対し被告との間に新規加盟店契約を締結することを強要している。

二  請求原因に対する認否

請求原因1、2、5の事実は認め、同3、4、6の事実は否認する。

本件地区本部契約の当事者は、原告ではなく、三四一号事件被告であり、したがって鹿児島地区本部たる地位を有するのも原告ではなく、三四一号事件被告である。また現時点において原告がテリトリー内の加盟店に新規加盟店契約の締結を強要ないし勧誘している事実はない。

三  抗弁

1  解除

(一) 被告は、原告に対し、左記(二)の解除事由に基づき、昭和六三年六月四日付内容証明郵便で、同書面到達後一か月以内に右事由が解消されない場合は、本件地区本部契約を解除する旨の意思表示をし、次いで昭和六三年七月六日付内容証明郵便により本件地区本部契約に定めた解除権に基づき本件地区本部契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は同月七日原告に到達した。

(二) 解除事由

(1) 独自商品の無断販売

本件地区本部契約では新商品の導入については、被告の承認あるいは許可が必要とされているのに、原告は、被告の承認あるいは許可なく新商品である生姜焼弁当、牛丼、五〇〇円の幕の内弁当、うな重、おかずセット、冷麺、カップヌードル、アイスクリームを販売している。

(2) 新商品の不導入

本件地区本部契約では、被告の指示した新商品の導入をしなければならないとされているにもかかわらず、原告は、被告が新商品として、昭和六三年六月一日からの販売を指示した、ほっかほっか亭のネーム入りPB(プライベートブランド)ジュース(オレンジジュース等六種類)を販売しない。

(3) 調理方法の無断変更

本件地区本部契約では、商品の提供方法の変更については、被告の承認あるいは許可が必要とされているのに、原告は、「すき焼き弁当」の製造販売にあたって、被告の指定した方法を一方的に変更して、その製造方法ですき焼き弁当を製造販売するよう鹿児島県内の加盟店に指示している。

(4) 指定食材の不使用

本件地区本部契約では、被告が指定する食材(以下「指定食材」という。)の仕入先の変更については、被告の承認あるいは許可が必要とされているのに、原告は、被告の承認あるいは許可なく、地区本部の独断で「のり類」、「おかか」「きんぴら」「LL(ロングライフ)ポテトサラダ・スパゲティーサラダ」、「鶏ももカット肉」、「衣付トンカツ」などにつき、指定食材でなく独自の食材を独自の業者から仕入れ、右独自の食材を用いて弁当などの商品を製造販売している。

(5) 指定配送業者に対する支払条件の無断変更

被告は、指定食材については、被告が仕入先から一括して購入し、それを一括して訴外トーホー株式会社(以下「トーホー」という。)に販売し、トーホーが、原告のテリトリー内の加盟店に売却、配送することにし、原告は各加盟店に売却された食材代金の回収業務を行っていた。

本件地区本部契約では仕入れの支払方法の変更は被告の承認あるいは許可が必要とされているにもかかわらず、原告は、被告の承認あるいは許可なく、各加盟店から徴収した食材代金のトーホーへの支払時期を変更している。

(6) 加工食材の製造方法の第三者への漏洩

本件地区本部契約では、被告が開発した加工食材の製造方法を第三者に漏洩してはならないが、原告は、第三者に右加工食材の製造方法を漏洩している。

(三) 信頼関係の破壊

仮に、解除に信頼関係を破壊する事由の存在が必要であるとしても、フランチャイズ契約においては、第三者の一致したイメージを維持するため提供する商品及びサービスの統一性が強く要求されるところ、原告には次のとおり信頼関係を破壊する事由がある。

(1) 誓約書の提出と当時の違反行為

原告は、昭和六〇年三月二日、被告に対し、本件地区本部契約に違反しフランチャイズシステムから逸脱したことを陳謝し、以後フランチャイズシステムに従う旨の誓約書を提出した。同日ころにおける原告の本件地区本部契約に違反する事情は次のとおりであった。

<1> 独自商品の無断販売

原告は、テスト販売中と称して、「牛丼」「カツ丼弁当」を、被告に無断で製造販売した。

<2> 指定食材の不使用

原告は、指定食材のうち「濃口・淡口醤油」「うなぎたれ」「すき焼きたれ」「かつ重たれ」「ハンバーグ・ソース」「とんかつソース」「チキン南蛮ソース」「ハンバーグステーキ」「のり類」「すきやき牛肉」「酢」につき、指定食材を使用せず、独自の業者から独自の食材を仕入て弁当などの商品を製造販売している。

<3> 販売促進企画の無断変更

被告は、昭和五九年一一月一日から七日にかけてのステーキ弁当販売促進キャンペーンを行ったが、原告は被告の指示に従わず、キャンペーンの内容を縮小して実施した。

<4> 被告に対する支払い遅延

原告は、被告から仕入れたユニホーム等の代金及びロイヤリティーの支払を遅延していた。

(2) 原告は、年間を通じての販売商品である「すきやき弁当」を冬季に限定して販売していた。

(3) 被告は、昭和六三年初めから、鶏肉につき、すべてタイ国産の輸入肉を使用することに決定したが、原告はその決定に従わず、タイ国産の鶏肉を仕入れず、従前からの仕入先である鹿児島県経済農業協同組合連合会から仕入れた鶏肉を使用して弁当等の商品を製造販売した。

(4) 右誓約書提出後も、原告は、指定食材以外の食材の仕入れを継続したが、冷凍食品については、離島の加盟店には、トーホーから仕入れ、鹿児島県内の他の加盟店には、トーホー以外の独自の業者から仕入れるというように、同じ食材でありながら、配送経費のかかる離島のみ、被告指定配送業者から仕入れるという恣意的な取扱をしていた。

2 更新拒絶による契約の終了

(一)(1) 被告は、原告に対して、本件地区本部契約の期間満了日の一八〇日以上前である昭和六年八月二五日付内容証明郵便により、本件地区本部契約の更新を拒絶する旨の意思表示(以下「本件更新拒絶」という。)をした。

(2) したがって、本件地区本部契約は、期間満了日である平成元年四月三〇日の経過をもって終了した。

(二) 仮に、更新拒絶の意思表示に契約を継続し難いやむを得ない事由を必要とするとしても、原告には右1(二)(三)項のとおりの事実があり本件地区本部契約を継続し難いやむを得ない事由が存した。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1(一)の事実は認める。

2(一)  同1(二)(1)の事実のうち生姜焼弁当を無断で販売した事実は認め、その余の事実は否認する。

「生姜焼弁当」(豚肉使用)は、原告のテリトリー内では好調な売上を示していた「焼肉弁当」(豚肉使用)を被告が売上不振を理由に廃止したため、その替わりとして、発売したものである。その期間も昭和六三年四月二〇日からにすぎず、被告からの同年六月四日付内容証明郵便到達後、被告に対し、同年七月五日付内容証明郵便により、近日中に製造を中止する旨回答し、そのとおり製造販売を中止している。

また、五〇〇円の幕の内弁当については、宮崎地区本部においても六〇〇円で販売されており、被告においてもその販売につき異議をとどめたことはない。

(二)  同1(二)(2)の事実は否認する。

原告は被告に対し、「原告と代表取締役を同じくする三四一号事件被告が、株式会社カゴメのベンダー業務を従前より行っている関係から(この点については被告も容認していた。)、カゴメのジュース販売を鹿児島県内の加盟店で行っており競合商品でBジュースを原告のテリトリー内の加盟店で販売することは難しい。旨を伝えていたにもかかわらず、被告はいきなりPBジュースを納品してきた。原告はPBジュースの導入につき積極的ではなかったが、加盟店に仕入れを禁止した事実はない。

(三)  同1(二)(3)の事実は認める。

被告の指定する調理方法は煩雑で時間がかかり、また食材の腐敗もおこりやすいために、原告が改善したものである。

(四)  同1(二)(4)の事実のうち、指定食材のうち使用していない食材があることは認める。

しかしながら、使用食材のうち指定食材の占める価格割合は昭和五八年以降増加しており、昭和六三年五月当時には約半分の割合まで増加していた。

(五)  同1(二)(5)の事実のうち、指定配送業者であるトーホーへの支払時期を変更したことは認める。

しかしながら、そもそも指定配送業者への支払期限については本件地区本部契約に規定はなく、トーホーの承諾も得ていて慣行化しており、その支払延期期間も一〇日にすぎない。

(六)  同1(二)(6)の事実は否認する。

3  同1(三)の事実は否認する。

被告が解除事由としてあげる事実については、2項のとおりいずれも原告側には違反を正当化する相当な事由があり、また次の事情も存在するので、原告に信頼関係を破壊する事由は存しない。完成されたフランチャイズシステムにおいては、商品、調理方法、販売促進企画などを統一し、商品の均質性を維持するため統一した食材を使用することが必要であるが、原告被告間の本件地区本部契約は契約の文言上はフランチャイズシステムが原告、被告間に完成されているかのようであるが、その実質はフランチャイズシステムとはほど遠いものである。

(一) 独自食材使用の歴史的相当性

原告が、昭和五五年、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部との間で、本件地区本部契約を締結した当時、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部は、食材の調達及び製造並びにその配送について、何ら整備されたシステムを有しておらず、原告に対する適切な指示、指導もなかったので、原告は独自に食材及び配送業者を開拓せざるを得ず、現在の原告テリトリー内の食材流通のシステムは原告が独自に確立したものである。

(二) 被告のテリトリー内での商品、食材の不統一性

地区本部を介さず、被告と直接加盟店契約を締結している北九州及び山口県の加盟店で組織する「山九会」に参加している店舗(約七八店舗)では使用食材のうち約七割を加盟店が独自に仕入れており、また被告と本件地区本部契約同様の契約を締結している宮崎地区本部においても、使用食材のうち、鶏肉、畜肉製品の一部、味噌醤油等の調味料などかなりの部分を独自に仕入れていたのであって、被告のテリトリーである九州地域内(山口県を含む)でも、食材の統一化はなされていない。

また商品についても、原告と同様の地区本部契約を締結している沖縄地区本部が「ゴウソ弁当」、宮崎地区本部が「チキン南蛮弁当」、長崎県内の加盟店が「カレー弁当」を独自に販売していたことがある。そして独自に販売していた商品のうち後に被告により、九州地域本部の統一商品に格上げされて九州地域全体で販売されるようになったものもある。

(三) 総本部の商品等の統一化に対する被告の妨害

被告は、ほっかほっか亭総本部との間で、請求原因1(1)記載のとおりフランチャイズ契約を締結しており、右契約には本件地区本部契約と同様、商品、調理方法、販売促進企画、食材などの統一性を維持すべき旨の規定が定められている。しかしながら、被告は総本部の食材等の統一化を妨害したことがある。

(四) ほっかほっか亭フランチャイズシステムの全国的未統一性

ほっかほっか亭フランチャイズシステムは、株式会社ほっかほっか亭総本部を頂点として、その下に東部地域本部、関西地域本部、九州地域本部(被告)の三地域本部があり、その下に地区本部、加盟店がある。

ほっかほっか亭フランチャイズシステムの現状は、商標、マーク、カラーコルトンについては、包材、基本的なメニューなどは全国的に統一されているが、食材、調理方法、基本的なメニュー以外の商品、ロイヤリティーの額などについては、全国的に統一されてはおらず、食材の調達については、各地区本部が独自に調達してきた歴史がある。

(五) 誓約書の無効性

被告は、原告に対し、食材、包材の供給を停止する旨強迫し、被告に誓約書を提出させた。

4  同2のうち(一)(1)の事実は認め、その余は争う。

(平成元年(ワ)第三四一号事件)

一  請求原因

1  昭和六三年(ワ)第五四三号事件請求原因1のとおり、被告は九州地域本部の地位にある。

2  同事件請求原因2のとおり、三四一号事件被告は、昭和五五年一一月二一日、株式会社ほっかほっか亭九州地域本部との間で、本件地区本部契約を締結した。

3(一)  被告は、三四一号事件被告との間で、昭和六一年五月一日、本件地区本部契約を、五四三号事件請求原因4のとおりの内容で更新した。

(二)(1)  五四三号事件抗弁1のとおりの事実により、被告は、三四一号事件被告との間の本件地区本部契約を約定解除権に基づき解除する旨の意思表示をし、右意思表示は昭和六三年七月七日、三四一号事件被告に到達した。

(2)  五四三号事件抗弁2のとおりの事実により、被告は、三四一号事件被告との間で本件地区本部契約につき、契約期間満了日の一八〇日以上前に、更新拒絶の意思表示をした。したがって本件地区本部契約は期間満了日である平成元年四月三〇日の経過をもって終了した。

(三)  本件地区本部契約において、契約終結にあたっての原状回復については、五四三号事件請求原因2(八)のとおり定められている。

(四)  原告は、五四三号事件請求原因3のとおり、三四一号事件被告から、本件地区本部契約に基づく地位を譲り受けたとして、「ほっかほっか亭」の表示を用いて商号登記し、別紙標章目録(一)、(二)記載の標章(以下「本件標章」という。)を使用して、本店及び直営店において、看板を掲げ、弁当などの商品を製造販売し、また「ほっかほっか亭」の表示を用いて、加盟店の募集をしている。

(五)  「ほっかほっか亭」の表示、本件標章は、全国的に周知であり、被告の製造販売する弁当などの商品及び営業活動を象徴するものである。

(六)  原告は、本件地区本部契約に基づく地位を譲り受けたとして、「クッキングマニュアル《応用実例写真集》」と題する冊子及び「ほっかほっか亭会員証」を占有している。

(七)  よって、被告は、三四一号事件被告に対し、本件地区本部契約終了に基づき、原告に対し、不正競争防止法一条一項一号、二号、一条ノ二に基づき、標章等の使用差止等を求める。

4  仮に、五四三号事件請求原因3のとおり、本件地区本部契約に基づく地位が三四一号事件被告から、原告に移転したことが認められるとすれば、右請求原因は原告と三四一号事件被告とを置き換えて主張する。

よって、被告は原告に対し、本件地区本部契約の終了に基づき、三四一号事件被告に対し、不正競争防止法一条一項一号、二号、一条ノ二に基づき、標章等の使用差止等を求

二  請求原因に対する認否

1  請求原因事実のうち外形的事実はいずれも認め、法的効果に関する主張は争う。

2  被告と本件地区本部契約関係にあるのは原告である。

したがって、本件地区本部契約に基づく活動等は全て原告において行っており、被告から解除及び更新拒絶の意思表示を受けたのも原告である。

理由

(昭和六三年(ワ)第五四三号事件)

一  原告の地位について

1  請求原因1、2、5の事実は、当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実及び証拠(甲二、三、七の1、2、八の1、2、一〇ないし一二、六三、七九、乙六五ないし六七、六九、証人本川嘉史、迫康行、力武幸一、弁論の全趣旨)によれば、次の事実が認められる。

(一)  三四一号事件被告(当時、鹿児島食品サービス株式会社)代表取締役木佐貫晶裕は、昭和五七年、鹿児島県内で「ほっかほっか亭」の類似標章を使用して弁当等の製造販売をしていた業者に対し、「ほっかほっか亭」類似標章の使用差止等の仮処分を申請した。木佐貫は、仮処分申請にあたり、事案の性質上、「ほっかほっか亭」の商号を冠した者を申請人とするのが適当であると考え、昭和五七年七月六日、木佐貫が代表取締役であり、所在地も三四一号事件被告と同一でいわゆる休眠会社であった「株式会社フジ通商」の商号を「株式会社ほっかほっか亭」に変更し(乙六七)、「株式会社ほっかほっか亭」の商号を冠した原告名義で仮処分を申請し、第一審、控訴審ともほぼ原告の主張どおり認められた(甲八の1、2)。木佐貫が、昭和五五年一一月二一日付の被告との間の、地区本部契約の契約当事者たる三四一号事件被告の商号であった「鹿児島食品サービス株式会社」の商号を「株式会社ほっかほっか亭」に変更せず、休眠会社を利用したのは、三四一号事件被告は当時営業をしており、その名称が顧客に対し知名度があり、その商号を維持する必要があったことなどのためである。

被告は、「鹿児島地区本部が類似標章使用業者に対し仮処分申請をしたこと、判決では、ほぼ鹿児島地区本部の主張どおり認められたこと、前記商号変更の詳細についてはともかく、仮処分の申請人名義を「株式会社ほっかほっか亭」としたこと」を認識していた。

(二)  木佐貫は、(一)項記載の商号変更後も、被告との間で、昭和六一年五月一日、地区本部契約を更新するにあたっては、「鹿児島食品サービス」の名称を使用する(甲七の2、一〇)など被告との間でやりとりされた文書では依然として「鹿児島食品サービス」の名称を使用し、鹿児島県内の加盟店からのロイヤリティー及び食材代金の振込口座も「鹿児島食品サービス」の名義を使用する(甲三)一方、税務会計上の処理については、加盟店に関するものについては、原告会社の名義で処理し、直営店については「鹿児島食品サービス」の名義で処理していた(甲七九)。加盟店との間の各加盟店契約については、商号変更以前より、「株式会社ほっかほっか亭」の名称を使用し、商号変更後も「株式会社ほっかほっか亭」の名称を使用して加盟店間との加盟店契約を締結している(甲三)。

(三)  昭和六三年に本件訴訟が提起されるまで、原告が「鹿児島食品サービス」と「株式会社ほっかほっか亭」の名称を混在して使用していることにつき、被告は原告に対し、何らかの異議はもちろん、問い合わせをしたこともない。

3  原告は、昭和五七年七月六日の「株式会社フジ通商」から「株式会社ほっかほっか亭」への商号変更と同時に、三四一号事件被告から株式会社ほっかほっか亭(原告)に営業が譲渡され、地区本部契約に基づく地位は原告に移転した旨主張するが、営業譲渡契約書、株主総会議事録等本来当然にあるべき書証の提出がないばかりでなく、前記認定のとおり、原告は、被告に対してはその後も契約書等において「鹿児島食品サービス」の名称を使用していることなどからすると、地区本部契約に基づく地位が原告に移転し、三四一号事件被告が地区本部契約上の地位を離れたとは到底認められない。

しかしながら、被告は、昭和五七年に原告が「株式会社ほっかほっか亭」の名称でもって仮処分申請をしたことを知っていたこと、また、その後昭和六三年に本件訴訟が提起されるまで、何らかの異議はもちろん、問い合わせすらしなかったこと、三四一号事件被告と原告は、同一の代表者及び同一の所在地にある法人であり、その実体は同一の法人格に近いものであり、被告にとって、三四一号事件被告が地区本部契約上の地位を離れ同契約上の債務を免れてしまうのは格別、三四一号事件被告が地区本部契約上の地位を有しつつ、原告にも地区本部たる地位を認めることにつき特段の不利益はないことなどからすれば、被告は、昭和五七年以降、三四一号事件被告が地区本部契約上の地位を維持しつつも、原告も地区本部契約上の地位にあることを黙認することにより、被告との間で、三四一号事件被告及び原告の両者が、地区本部たる地位をもつという非典型的、相対的な契約関係が成立したとみるべきである。

4  したがって、三四一号事件被告とともに原告も本件地区本部契約上の地位を有すると解すべきである。

二  解除の効力について

1  抗弁1(一)の事実、同1(二)(1)の事実のうち生姜焼弁当を無断で販売した事実、同1(二)(3)の事実、同1(二)(4)の事実のうち、指定食材のうち使用していない食材がある事実、同1(二)(5)の事実のうち指定配送業者であるトーホーへの支払時期を変更した事実は、当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実及び証拠(前掲各証拠、甲一、四、五、六の1、2、九、一三の1ないし6、一四、一五の1、2、一六、一七、一九の1ないし14、二〇の1ないし13、二一ないし二四、二五の1ないし5、二六の1ないし5、二七、二八の1、2、二九の1、2、三〇の1、2、三一、三二、三三の1、3、三七の1ないし3、三八の1、2、三九ないし四一、四五ないし六一、六四ないし六六、七四、七七、七八、八〇ないし八二、乙一ないし一四、一五の1、2、一六の1ないし4、一七、一八の1、2、一九の1ないし8、二〇ないし二七、二九の1ないし3、三〇、三三、三四の1ないし15、三五、三六、三七の1ないし15、三八ないし四二、四三の1ないし3、四四、四五、四六の1ないし9、四七ないし四九、五一ないし五四、五七ないし六四、七〇、七一、七三の1ないし5、証人小澤眞、斉藤裕之、中島信義)によれば、次の事実が認められる。

(一)(1)  被告は、ほっかほっか亭フランチャイズシステムにおいて、全国を統括する地位にあるほっかほっか亭総本部との間で、昭和五五年五月、「地域本部契約」を締結し、九州地域を統括するサブフランチャイザーとしての地位を得た(甲八一)。被告の代表取締役である塩井末幸と原告及び三四一号事件被告の代表取締役である木佐貫は、事務機販売の同業者として交流があったことを機縁として、被告と三四一号事件被告は昭和五五年一一月、本件地区本部契約を締結し、三四一号事件被告は、被告のもとで鹿児島県内を統括する、いわば「サブサブ」フランチャイザーとしての地位を得た。

本件地域本部契約及び本件地区本部契約の文言上は、ほっかほっか亭フランチャイズシステムは、フランチャイズシステムとして完成されていることを前提にしているが、当時、総本部のもとで食材、調理方法、基本的な弁当等のメニュー、ロイヤリティーの額などについては全国的に統一されておらず、食材の調達については、各地区本部にほぼ委ねられた状況であった。九州地域においても、昭和五五年一一月当時、ほっかほっか亭のチェーン店は、被告のもとにある数店の直営店、加盟店にすぎず、その直営店及び加盟店への食材の調達及び配送についても整備されておらず、原告はその使用する食材の調達及び配送につき、独自に食材業者及び配送業者を開拓することが多かった。被告は、翌五六年五月ころ、宮崎県、沖縄県をテリトリーとする二つの地区本部契約を訴外業者と締結して、宮崎地区本部及び沖縄地区本部とし「サブサブ」フランチャイザーを創設しているが、両地区本部においても、独自に食材業者及び配送業者を開拓することが多かった(甲一六)。

(2)  ほっかほっか亭総本部は、昭和五七年ころから、ほっかほっか亭フランチャイズシステムを活性化するため、食材の統一及び食材の仕入れの統一をはかろうとしたが、被告は、総本部が全国統一商品として昭和五七年に売り出した「らんちかれい」(甲五五、五六)の販売を拒否して、被告が昭和五六年ころから独自で開発し九州で販売していた同種の商品である「カレーライス弁当(「らんちかれい」と食材、製造方法は異なる。)」(甲五七)を継続販売し、また総本部が昭和五七年に導入した「豚カツソース」、アルミシートを使用することで改良を加えた「お茶パック」及び「PB(プライベートブランド)ハンバーグ」の仕入れを拒否し、「カツカレー」の製造販売及びカレーのイージーオープンも拒否した。

(3)  被告のテリトリーである九州(山口県を含む)においては、食材は不統一であったものの、商品(メニュー)はほぼ統一されていたが、昭和五五年から昭和六一年の間に、地区本部独自の商品として、鹿児島地区本部の「牛丼」「カツ丼弁当」、宮崎地区本部の「チキン南蛮弁当」「高菜弁当」、長崎県内の加盟店(鹿児島、宮崎、沖縄の各県以外には、地区本部は創設されておらず、被告が直接、加盟店と加盟店契約を締結している。)の「カレー弁当」などが製造販売されたことがあり、そのうち「カツ丼弁当」については、昭和五九年に、「カツ重」の名称で、被告により九州全体の商品として製造販売されるようになり、また「チキン南蛮弁当」「高菜弁当」もそのころ被告により九州全体の商品として製造販売されるようになっている(甲一七)。

(二)  被告は、昭和六〇年ころから、九州地域内でのほっかほっか亭フランチャイズシステムの契約書どおりのフランチャイズシステム化を企図して、鹿児島地区本部に対し独自食材の使用禁止、食材の統一化、商品の統一化などを要求するようになった。被告は、原告に対し本件地区本部契約に従う旨の誓約書を提出しなければ、被告から原告への一切の食材、包材の供給を停止すると通告し、被告代表者塩井は「もう木佐貫弁当をやったらいい。独立したらいい。」などと言った。そのため、原告代表者木佐貫は、被告に対し、昭和六〇年三月二日、本件地区本部契約に違反しフランチャイズシステムから逸脱したことを陳謝する旨、逸脱行為の解消を実行しない場合には契約の解消を含めて如何なる処置を取られても異存ない旨の誓約書(乙四)を提出し、後記(3)記載の未払金八〇〇万円を直ちに支払った。当時の原告の行為で問題とされたものは、次のとおりである。

(1) 原告は、食材の統一のため被告が指定する食材のうち「濃口・淡口醤油」「うなぎたれ」「すき焼きたれ」「かつ重たれ」「のり類」「すきやき牛肉」「酢」などを使用せず、指定食材以外の独自の食材を用いて弁当などの商品を製造販売していた(乙二六)。なお昭和五九年四月には、食材によっては安く仕入れられるものがあるので、食材の仕入れについては地区本部の対応にまかせて欲しい旨の原告の申入れ(乙一四)に対し、被告は「原告のみ別ルートで仕入れをするのなら、ほっかほっか亭の看板をおろすつもりでやって欲しい。」旨回答している。

(2) 被告は、昭和五九年一〇月、翌一一月一日から七日にかけて各店舗においてステーキ弁当購入者にマグカップを進呈するステーキ弁当販売促進キャンペーンを実施すること、そのための経費として一店舗あたり五万円を徴収すると決定したが、原告は一律五万円は高すぎるとして、被告の承諾なく、鹿児島県内では予算を縮小して、進呈品の総数を減らし、キャンペーンの規模を縮小して実施した(乙二五)。

(3) 原告は、被告に対し次の理由で三か月分のロイヤリティー、ユニホーム代金等合計約八〇〇万の支払を履行していなかった。

<1> 原告が被告から仕入れたユニホーム等の請求代金額が、仕入れ前に被告が発表していた代金額と異なっている。

<2> 原告が被告から仕入れていたレジスターの請求代金が不明確である。

<3> 原告が被告から商品を仕入れた際添付される納品書に商品の価格が記載されていないため、その後請求書が送付されるまで、請求代金額が不明である。

<4> 被告は、年三回九州全域で行われる販売促進キャンペーンの費用として一店舗あたり一律一回五、六万円を徴収しているが、売上額の異なる店舗から一律の額を徴収することは不合理である。

(三)  被告は、原告の紹介で、昭和五八年から、鶏肉を鹿児島県経済農業協同組合連合会から仕入れるようになったが、昭和六一年から一部の鶏肉を価格の安いタイ国から輸入するようになり、次第にその輸入量は増加し、昭和六三年初めには同農協連からの鶏肉(加工済鶏肉を含む。)の仕入れを停止した。しかし、原告は同農協連が地元企業であり、鶏肉のうち特にチキン南蛮用鶏肉などに同農協連が設備投資もしていたことなどを理由に被告の指定食材であるタイ国産の鶏肉(加工済鶏肉を含む。)を仕入れず、同農協連からの仕入れを継続した(甲九)。

(四)  被告は、原告に対し、昭和六三年六月四日付内容証明郵便(甲一〇)で、(1)被告の承諾なく独自の商品(生姜焼弁当)の販売をしていること、(2)食材の仕入先を被告に無断で変更し、商品の統一化を妨害していること、(3)食材の製作内容(ノウハウ)を第三者に供与していること、(4)指定配送業者に対する支払条件を被告に無断で変更していること、(5)新規ブランド商品(缶ジュース)の発売につき、被告の指定する取扱条件を遵守しないこと、を例示して、原告が本件地区本部契約に違反していること、同内容証明郵便到達後一か月以内に違約状態を完全に解消すること、その結果につき原告において被告に対し書面で報告することを通知催告した。

その当時において、原告が本件地区本部契約に違反していたと証拠上認められる事実とその事情は次のとおりである。

(1) 被告は、従前製造販売していた焼肉弁当を売上不振を理由に、昭和六三年四月廃止した。しかし、原告は、鹿児島県内では豚肉の産地ということもあって焼肉弁当が好調な売上を示していたため、被告に無断で、同年四月二〇日から、焼肉弁当と同様に豚肉を使用した「生姜焼弁当」を製造販売し、折から被告の統一商品である牛焼弁当の新発売キャンペーンのため同弁当購入者に抽選券を引かせて景品を配付するという販売促進企画(同年四月二〇日から同月二四日の間)が施行されていたが、その際、生姜焼弁当購入者にも右抽選券を引かせて景品を配付した(乙四八)。

なお、被告は、原告が被告に無断で牛丼、うな重、おかずセット、五〇〇円の幕の内弁当(被告の商品である幕の内弁当とは別価格の商品。)、冷麺、カップヌードル、アイスクリームなどを販売していた旨主張するが、前掲各証拠によれば鹿児島県内で右商品を販売していた店舗があったことは認められる(乙一三、一五の2、五七)ものの、右商品を鹿児島県内の多数の店舗が販売していた事実は認められず、したがって原告の指示により加盟店が右商品を販売していたとまでは推認できない。

(2) 被告は、昭和六三年六月一日から新商品として、ほっかほっか亭のネーム入りPB(プライベートブランド)ジュース(オレンジジュース等六種)の販売を決定し、初回納入としてPBジュースを鹿児島県内の店舗に納入した(乙六一、六二)。しかし、原告は、「三四一号事件被告が、株式会社カゴメのベンダー業務を従前より行っている関係から、カゴメのジュースの販売を鹿児島県内の加盟店、直営店で行っているため、競合商品であるPBジュースを取り扱うのは難しい。」旨、かねてから被告に対し申告していたのに、いきなり初回納入として送りつけてきたとして、以後鹿児島県内ではPBジュースを新商品として導入しようとはしなかった。

(3) 原告は、「すき焼き弁当の製造にあたって、被告の指定した方法、すなわち牛肉、玉葱などの食材を鍋で炒め、すき焼きのタレで味付けをするという方法(乙一〇)は、煩雑で時間がかかり、生の食材を使用するため食材が腐敗しやすい。」との理由で、被告に無断で製造方法を変更し、味付け処理済の牛肉、玉葱などの食材が一袋にパックされた既製品及び牛丼の素を使用し、すき焼きのタレも水で薄めて使うなどの調理方法を鹿児島県内の加盟店に指示してすき焼き弁当を製造販売させていた(乙二九)。

なお、被告は、すき焼き弁当を昭和六一年一二月から販売しているが、原告は被告に無断で、鹿児島県は夏期は気温が高く販売しても売上が延びないことを理由に、冬季にのみに限定して製造販売していたことがある。

(4) 原告は、食材の統一のため被告が指定する食材のうち、「のり類」「おかか」「きんぴら」「LL(ロングライフ)ポテトサラダ・スパゲティーサラダ」「鶏ももカット肉」「衣付トンカツ」などにつき、独自の食材を仕入れて商品の製造販売をしていた(乙三四の3、4、一二)。

被告は指定食材については、被告が一括して業者から仕入れ、それを一括してトーホーに販売し、トーホーが鹿児島県内の原告の各加盟店に統一価格で売却、配送し、原告は各加盟店に売却された食材代金の回収業務を行い、回収代金額の一部を手数料として取得するというシステムにしていた。昭和六三年五月の鹿児島県内の加盟店、直営店総売上高は約三億〇五三二万円であり、トーホーからの食材仕入額は約七八万円で、トーホー以外からの食材仕入額で被告が独自仕入を認めている米などの食材を除いた仕入額は約二七四七万円である(甲一六別表1)が、トーホーからの食材仕入額のうちには、被告の指定食材以外の食材で加盟店、直営店が原告の独自に開拓した業者から仕入れ、その食材をトーホーに配送させている食材も含まれていると推測される。昭和六三年三月の加盟店の弁当売上額が約三億一九一九万円で、指定食材の仕入額は約五九七九万円であること(乙七〇)からすると、昭和六三年五月のトーホーからの食材仕入額のうち指定食材以外の独自の食材(被告が独自仕入れを認めているものを除く)の仕入れ額は、(三億一九一九万×七三二八万-三億〇五三二万×五九七九万)÷三億一九一九万=約一六〇九万円と推測され、したがって、指定食材仕入額は七三二八万-一六〇九万=五七一九万円、独自食材仕入額は二七四七万+一六〇九万=四三五六万円と推測され、原告は被告の承諾のない独自食材をかなり使用していたと推認される。

また、原告は白身フライなどの冷凍食品につき、配送経費のかかる離島である種子島、徳之島、奄美大島内の各加盟店にはトーホーから仕入れ、他の鹿児島県内の各加盟店には、トーホー以外の独自の業者から仕入れるという恣意的な取り扱いをしていた。

しかしながらその反面、原告の指定食材使用率は年々増加しており(甲一六別表1)原告が指定食材の使用につきある程度被告の意向に従ってきていることも認められる。

(5) 被告は、原告が回収した各加盟店のトーホーに対する食材代金につき、原告が、被告に無断で、トーホーへの支払時期を翌翌月五日払いにしていることにつき、本件地区本部契約書付属の協定書に違反し、「ロイヤリティー、仕入等の支払を規定どおり行うこと」との記載のある昭和六〇年三月二日付誓約書にも反すると主張する。しかし、右協定書はその記載内容からして原告の被告に対するノウハウ使用料及びロイヤリティーの支払期日に関するものであって、被告の食材指定業者であり被告とは別人格であるトーホーに対する回収代金の支払期日を定めたものではなく、また誓約書の前記記載についても、その記載内容及び右誓約書が原告の被告に対するロイヤリティー及び仕入代金の不払を契機として作出されたものであることからして「仕入れ」とは原告の被告に対する仕入れを指し、原告のトーホーに対する仕入れを指さないのは明らかであり、前記原告のトーホーに対する回収代金の支払期日がトーホーの承諾を得ていることも考慮すれば、被告の前記主張は採用できない。

(6) 被告は、被告が開発した加工食材の製造方法を原告が第三者に漏洩した旨主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。

(五)  原告は、前記被告からの昭和六三年六月四日付内容証明郵便(甲一〇)を受けて、被告の原告に対する食材、包材の供給停止に備えて、食材、包材の確保をはかるとともに、同年七月五日付で回答書(甲一一)を提出した。その内容は、生姜焼弁当については近日中に製造販売を中止する旨の記載があるものの、それ以外の被告の指摘する違反事項については、改善を約束するものではなく原告の反論を記載したものであった。

被告は、原告が違反を解消しないとして、本件地区本部契約に定められた解除権(一〇条)に基づき、同年七月六日付書面(甲一二)により本件地区本部契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は同月七日原告に到達した。

(六)(1)  被告が右解除の意思表示をした時点での、原告のもとにある鹿児島県内の店舗は七五店舗(うち加盟店は六五店舗、直営店は一〇店舗)であり、解除直前の昭和六三年二月時点での九州及び山口県の店舗数は四八九店舗であった(乙四七)。当時、被告のテリトリーである九州及び山口県において、被告が地区本部契約を締結して地区本部をおいていたのは、鹿児島、宮崎、沖縄の各県であった。

(2)  昭和六三年一月に、九州及び山口県内の加盟店の一部が「山九会」を結成し食材の値下げ等を被告に要求していたが、同会所属の加盟店(最も多いときで約七〇店舗)においては、原告と同様、指定食材を使用せず、加盟店独自の食材の使用率が高く、一部の加盟店では原告の独自食材使用率より高い割合で独自食材を使用していた。また宮崎地区本部(昭和六三年二月当時で三九店舗)においても原告と同様に、独自食材の使用の割合が高かった。したがって本件解除当時原告以外にも被告のテリトリー内において独自食材の使用率が高い地区本部及び加盟店があった。

(3)  ほっかほっか亭フランチャイズシステムは、ほっかほっか亭総本部を頂点にして、その下に東部地域本部、関西地域本部、九州地域本部(被告)の三地域本部がある(甲一)。全国的にみて、ほっかほっか亭フランチャイズシステムの現状は、商標、マーク、カラーコルトン、包材、基本的なメニューなどは全国的に統一されているが、食材、調理方法、基本的なメニュー以外の商品、ロイヤリティーの額などについては、依然として統一はされていない。

(七)  本件地区本部契約においては、地区本部の契約違反により解除された場合、原告の加盟店に対する権利は被告に自動的に移転する旨定められており、解除の効力は極めて強いものといえる。

3  争いのない事実及び2項で認定した事実によれば、本件地区本部契約における地域本部と鹿児島地区本部との関係は、地域本部のテリトリー内でほっかほっか亭の加盟店を増加させてロイヤリティー収入を相互に増加させるとともに、加盟店の増加がほっかほっか亭フランチャイズシステムの拡大に繋がり、同種業者に対する競争力を高め、そのことが更に加盟店獲得へ繋がっていって相互のロイヤリティー吸入を増やすという、相互依存性の高度な、契約当事者間の結びつきの強いものである。しかしながら、地域本部が地区本部に対し本件地区本部契約を解除した場合には、地区本部は、ほっかほっか亭の商号、商標、サービスマーク等の一切の使用ができなくなるだけでなく、長年の自己の投資と努力により築いてきた多数の加盟店に対する権利を即座に失い、一方地域本部は加盟店が離反しない限り地域本部の長年の投資と努力の結果である加盟店に対する権利を自動的に取得することができる(一二条)ことになり、地区本部は一方的に不利益を被る立場にある。したがって、地区本部側の契約継続に対する信頼は、合理的なものとして保護されねばならず、本件地区本部契約一〇条において「本契約および本契約に関連して締結した契約、協定、覚書の各条項に違反した場合」に解除できると定められているのは、本件契約及び関連契約等に違反し、「当事者間に信頼関係を破壊する事情がある場合には解除できる。」趣旨と解釈すべきである。

そこで本件について信頼関係を破壊する事情の存否についてみると、2項記載のとおり、原告には、生姜焼弁当の販売、PBジュースの不導入、独自食材の使用、すき焼き弁当の製造方法の変更などの契約違反があり、また原告の契約違反の事実は、昭和六〇年三月には、原告が被告に対し誓約書を提出するまでになったことがあるなど長年反復継続している。しかしながら、右契約違反の事実は、そのほとんどが、2(一)記載のとおり、昭和五五年一一月の本件地区本部契約締結時において、契約書の文言上は完成されたフランチャイズシステムを前提にしながら、実際は未完成のものであって、食材の仕入、配送システムもなく、原告が独自に食材を調達するなどしなければ、営業の継続が不可能な状況下にあり、被告も、その後、次第に食材の調達、配送システムなどフランチャイズシステムが完備していくまで、原告の逸脱行為を黙認せざるを得なかったことに起因するものであり、また原告も、独自食材の使用割合を、わずかずつではあるが低下させるなど、九州地域におけるほっかほっか亭フランチャイズシステムの完成を目論む被告の要望を全く無視していたものでないことなどを考慮すれば、昭和六三年七月当時原告、被告間に被告の原告に対する解除権を発生させるほどの信頼関係を破壊する事情があったとは認められない。なお、無催告解除の特約も本件地区本部契約の右性質に鑑み無効というべく、本件解除は催告後一か月を置いてなされているが一か月程度の催告期間ではなお本件解除を有効とするには足りない。

したがって、被告の原告に対する本件解除が有効になされたものとは認められない。

三  更新拒絶の効力について

1  抗弁2(一)(1)の事実は当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実及び前掲各証拠によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告と原告は、昭和六一年五月一日、本件地区本部契約を更新した(甲七の2、甲一〇)。その際被告が契約期間を五年間から三年間に縮小したのは、昭和五七年ころ大阪で加盟店とほっかほっか亭大阪事業本部との間で、加盟店の指定食材以外の食材使用、独自商品の販売などを巡って紛争が起きたため、総本部の指示で類似紛争を未然に防止するためである。

(二)  被告は、昭和六三年八月二五日付内容証明郵便(乙一)により、本件地区本部契約の更新を拒絶する旨の意思表示をし、右意思表示はその頃原告に到達した。

(三)  本件地区本部契約においては、「地区本部の加盟店に対する権利は、地域本部に自動的に承継する」との条項があるが、被告は右条項につき、地区本部の契約違反により解除された場合の規定であって、更新拒絶により契約が終了した場合には適用がない旨主張し、原告代表者本人も右主張に副う供述をしている。

3  二3項記載のとおり本件地区本部契約は相互依存性の高度な契約当事者間の結びつきの強いものであること、地域本部により契約更新が拒絶された場合には地区本部は、ほっかほっか亭の商号、商標、サービスマーク等の一切の使用ができなくなるだけでなく、長年の自己の投資と努力により築いてきた加盟店において、右更新拒絶を契機に、地区本部との加盟店契約を解約し(加盟店契約は、加盟店がほっかほっか亭の商標等の使用を許容されることを前提にしており、右使用ができなくなる状況が発生すれば、加盟店からの解約は当然認められる。)、ほっかほっか亭の商標等の使用権をもち、資本力も強く、食材、包材の調達、配送についても整備されたシステムを持つ地域本部との間で加盟店契約を締結して、以後もほっかほっか亭の商標等を使用して営業を継続しようとする加盟店がでてくることが予想されること、本件地区本部契約の文言上も特別の拒絶申出がない限り自動的に更新されると定められていることからすれば、地区本部側の契約継続に対する信頼は、契約の更新にあたっても、合理的なものとして保護されねばならない。そこで、本件地区本部契約九条において、「契約書の更新については、契約期間満了の一八〇日前に本契約当事者双方より特別の申出のない限り、自動的に更新するものとする。」と定められているのは、「契約を継続し難いやむを得ない事情」がある場合には、地域本部は契約期間満了の一八〇日前に、地区本部に対し更新拒絶の申出をすれば、期間満了日に契約は終了するとの趣旨と解釈すべきである。しかしながら、解除権の行使の場合と異なり、更新拒絶の場合には、債務不履行による解除権行使の場合の一二条に相当する約条はないので、加盟店に対する権利を地域本部が自動的に取得するわけではなく、したがって、加盟店が地区本部から離反しない限りは地区本部には大きな損失はなく、むしろ加盟店からロイヤリティー収入を失う地域本部にとって不利益な結果になること、契約期間満了の一八〇日前までに更新拒絶の意思表示をする必要があり、地区本部にとっては更新拒絶の意思表示が到達してから、契約終了日までに、食材、包材の調達、配送及び地区本部からの離反防止のための加盟店への働きかけなどが一応可能であることからすれば、解除権行使に必要とされる信頼関係を破壊する事情に比較すると更新拒絶に必要とされる契約を継続し難いやむを得ない事情は軽度なもので足りると考えられる。

そこで、本件について契約を継続し難いやむを得ない事情の存否についてみると、二2及び三2項記載のとおり、原告の本件地区本部契約違反は長年継続反復されていること、原告は、昭和五九年四月被告に対し、食材の仕入につき原告に任せて欲しい旨の申入をしたところ、原告に独自食材を使用するならほっかほっか亭の看板を下ろすつもりでやるようにと回答され、また、原告は被告に対し、昭和六〇年三月にはフランチャイズシステムからの逸脱解消を実行しない場合には契約の解消を含めて如何なる処置を取られても異存ない旨記載した誓約書を提出しており、食材の独自仕入等の契約違反を継続反復すれば、被告が本件地区本部契約の更新拒絶の意思表示をしてくることが、既に昭和六〇年ころには予測できたこと、本件地区本部契約の締結にあたっては、事務機販売の同業者として対等な立場で契約締結に至っており、被告が一方的に原告に対し契約締結を勧誘したような事情は窺われないこと、原告は被告の営業指導等にあまり依存せず独自に食材の調達等をして営業を継続してきたこともあって依然として独自食材の仕入率が高くその営業につき被告に対する依存性が高くはないこと、原告は昭和五五年から八年余り営業を継続しており鹿児島県内において相当な暖簾等の蓄積があること、本件更新拒絶の意思表示は昭和六三年八月になされており契約終了日である平成元年四月末日の八か月余り前になされていることを考慮すれば、更新拒絶の意思表示がなされた昭和六三年八月当時原告と被告間には被告の原告に対する更新拒絶を正当化するだけの契約を継続し難いやむを得ない事情が存したと認められる。

したがって、被告が昭和六三年八月二五日付内容証明郵便によってなした原告に対する本件地区本部契約の更新拒絶の意思表示は有効であり、本件地区本部契約は契約期間三年の終了日である平成元年四月三〇日の経過をもって終了したと認められる。

四  したがって、原告の鹿児島地区本部たる地位にあることの確認を求める請求及び原告が鹿児島地区本部たる地位にあることを前提とするその余の請求は、いずれも理由がない。

(平成元年(ワ)第三四一号事件)

一 請求原因事実のうち外形的事実は当事者間に争いがない。

二 昭和六三年(ワ)第五四三号事件理由一項記載のとおり、三四一号事件被告と原告が共に、昭和五七年以降本件地区本部契約に基づく鹿児島地区本部たる地位を持つに至ったこと、同事件理由三項記載のとおり平成元年四月三〇日の経過により本件地区本部契約が終了したことが認められ、更に右争いのない事実及び証拠(前掲各証拠、乙八一の1ないし6、八二、弁論の全趣旨)によれば、鹿児島地区本部たる地位にある三四一号事件被告及び原告は、別紙標章目録(一)、(二)記載の本件標章を使用して、本店及び直営店において、看板を掲げ、弁当などの商品を製造販売し、また「ほっかほっか亭」の表示を用いて、加盟店の募集をし、「クッキングマニュアル≪応用実例写真集≫」と題する冊子及び「ほっかほっか亭会員証」を占有していることが認められる。

したがって、三四一号事件被告及び原告は、被告に対し、本件地区本部契約の終了に基づき、標章等の使用を中止するなどの義務があり、被告の三四一号事件被告及び原告に対する請求はいずれも理由がある。

(結論)

よって、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条一項但書、九四条後段を適用し、仮執行の宣言は相当でないから、これを付さないことにして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮良允通 裁判官 原田保孝 裁判官 宮武康)

別紙標章目録

(一)

<省略>

(二)

<省略>

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